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2009年4月21日 (火)

つみきのいえの下には・・・

 鹿児島では、今週もベストセラー第1位にランクされている(「南日本新聞」4月19日)「つみきのいえ」について、つれづれにつづってみたいと思います。

Photo ※この画像は、浜ヶ城保育園が白泉社の許可を得て、本書を紹介するためにここに掲載させていただいているものです。転載等はお断りします。

 みなさん、ご存じかと思いますが、鹿児島県出身の加藤久仁生氏が監督した映画「つみのいえ」は、今年のアカデミー賞を受賞して大きな話題になりました。本書はその映画の脚本を手がけた平田研也氏とともに絵本にしたものですね。受賞直後は、増刷が間に合わず、某通販書籍サイトでもかなり待たされましたし、実際に店頭で目にするようになったのはずいぶん経ってからではないでしょうか。

 やわらかでぬくもりを感じさせる筆づかいは、映画のゆったりとした時の流れをそのまま絵本の中に流し込んでいるようです。読んでいて、ほんわかとした気持ちになってきますね。たかが絵本と言えないほどの奥深さは、いったいどこからやって来るのでしょうか?

 主人公のおじいさんは海に沈んでいく町にずっと住んでいて、家が沈むたびに屋根の上に新しい家を建て増ししてきました。結婚をして、子どもが生まれ、やがて成長して家を出て行き(たぶん)、年老いた妻が病に臥せって、そして、妻を看取り(おそらく)、今は独りとなりました。それでもずっとおじいさんはこの町に住み続けてきました。そのおじいさんがまた、新たに家を造り始めたとき、1本の金槌を海中に落としたことで、その人生を海に潜るという下方向の運動で振り返ってみせます。おじいさんの潜水は過去への遡及とイコールです。そこにこの物語のおもしろさのひとつをみてとることができるでしょう。海に沈みゆく町で家をひたすら建て増していくのは、人生を積み重ねていくことにほかなりません。極端に言えば、文明や都市にもまた、領土や領域の拡大という横方向の空間的拡がりだけでなく、積み重ねるという上方向の運動が含まれてきたのではないでしょうか?

 たとえば、エンパイアステートビルや台北101、建設中のブルジュ・ドバイなどの超高層ビルはそうした人間の上方向への営みの典型といえるでしょう。しかし、「つみきのいえ」では、それを上昇として描くのではなく、潜水という下方向の運動で表現することによって、欲望のような強い衝動ではなく、おじいさんのあの穏やかな感覚を描くことに成功しているといえるのではないでしょうか。

 こうした絵本あるいは児童文学の奥深さを今後も折に触れて紹介していけたらと思います。

 

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